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古町糀製造所・古町糀物語
糀、麹との出会い

私たちは銀座でおむすび屋を営み、食材の勉強で新潟の味噌蔵、酒蔵を訪れていました。そこでは、糀造りに携わる方の肌の美しさ、頂いた一杯の糀のお米だけで表現される濃厚な甘さに驚きました。
甘酒とは、酒粕に砂糖を加えて甘さを出すものだと思っていました。糀の力で、米だけでこれだけの甘さを引き出し、アルコールも入っていない。
そして、味噌、味醂、日本酒などの発酵食の多くに欠かせないものである。
特に日本酒造りにおいて  一 麹(糀) 二 酛(もと) 三 造り といわれ、最も大切なことに上げられている。
そして、糀が糖化された状態の栄養価の高さ。それは点滴にも匹敵するという。江戸時代には、食の細くなる夏に好んで飲まれたそうです。 また、酒屋の世界では、「産後の肥立ちが悪けりゃ、甘酒飲ませ」という言葉があり、その栄養価の高さから出産前後の母親に積極的に飲ませたといいます。
<ここでいう甘酒は、アルコール分の残る酒粕をつかったものではなく、糀をつかったアルコールゼロのものです。>

おむすび屋では様々な品種のお米のみならず、ご飯にあう食材、発酵食など多くの食材に触れます。当時はおむすび屋を始めて7年たったころでしたが、その間で最も驚いた食材がこの糀だったのです。これだけ魅力のある糀が、どうして今に広く伝わっていないのだろう、そんな疑問から糀の勉強が始まりました。
酒蔵
新潟県新潟市
 
「新潟のために米を使った事業をおこしてほしい。その本店を新潟に構えてくれないか。寂しくなった商店街がある。ここに店をだして元気づけてほしい。例えば、甘酒屋はどうだろう?」

世の中にあふれるほどの食材があるなかで、私が一番関心をもっている甘酒(糀)というのです。運命的なことを感じ、お引き受けすることにしました。ただ、今でこそ「糀」という言葉を見聞きする機会が増えましたが、当時は糀?であり、甘酒はどちらかと言えばあまり美味しくない飲み物と思われていました。そしてお願いされた出店場所は、人通りが決して多いとは言えない商店街です。 このような条件のなか、お店が成立するのだろうかという不安はありましたが、2009年7月、新潟の上古町商店街という静かな地に、古町糀製造所を構えることになったのです。
こうじ専門店・古町糀製造所 麹、こうじ、糀
 
  日本酒
 
それは震災で加速された感があります。
店がモノを売るということで、世の中にどのような役割を担えるのか? そのようなことを思い描きながら、古町糀製造所を立ち上げました。味噌、味醂、そして日本酒といった、代表的な日本の発酵食に不可欠なものでありながら、光を浴びてこなかった糀。糀そのものの価値を伝えることはもちろんですが、一杯の糀を提供することで、地域の財産ともいえる酒蔵の佇まい、伝統産業や農業を持続的に残す役割を担えるだろう。そして店を通じて、人と人とのつながりを生み出し、店そのものが地域とのつながりに欠かせないものになると考えています。

私どもの糀は、新潟県の様々な味噌蔵、酒蔵の杜氏、蔵人の協力のもと、一緒に作り上げています。特に、日本酒は日本酒離れと言われて久しい。そのなかで、彼らが得意とする糀造りで、私たちは仕事をどんどん増やすことができました。
 
  新潟県・酒蔵・糀
 

ある酒蔵は新潟のなかでも豪雪地帯にあります。
その豊富な雪に恵まれ、この酒蔵からは混混と水が湧き上ってくる。
仕込み水は当然のことながら、米を洗うところから湧き水という贅沢さ。

これは 奇を衒ったものではなく、自然に恵まれた蔵では当たり前のこと。ただ、水と共に生きる酒蔵は、自然に負荷をかけることを嫌います。夜間に流れ出る湧き水を大切に桶にため、それを洗米時に放出して使っています。 桶に貯められた水を覗き込むと、水は青色に輝いている。

“水色”という言葉があるように、水は透明ではなく、本来青色だったことに改めて気づくのです。ここでは経済活動と自然との共生を強く感じました。古くから続く蔵だからこそ、譲れないことがある。 これらの世界とのつながりが、私たちに一層のやりがいをもたらし、そして提供する糀のひとつとなっています。
 
豪雪地帯の雪解け水 仕込みから湧水を使う    本物の甘酒
 
 
 
 
当時は空き店舗が多く、閉じられたシャッターが目につく商店街でした。
モノを売るだけでなく、店として何かできないか? そこでシャッターをつかわず、木の引き戸のお店にしました。 「店が閉じているときも、美しい」、そういう店の景観がきっとこの通りを素敵にするだろう。また、何気なく店内においたベンチでは、見ず知らずのお客様同士が隣に座らざるを得ません。それがきっかけで会話が進みます。お客様たちからは、このお店に立ち寄ることが生活の楽しみになる、とも言われました。

糀の甘さで表現した伝統的・健康的なドリンクは、若い人には新しく、昔を知る人には懐かしい味。そしてお店の外観、地域産業との関わり、お客様同士のつながり・・・それらが支持を受け、世代を問わない予想を上回るお客様からご利用頂けることになったのです。
 
そして一連の取り組みが評価され、私は今、新潟のとある酒蔵の当主になります。
おむすび屋が、糀屋になり、そして酒蔵に。 新たな試行錯誤のなかにおりますが、楽しくはたらいています。
いつかは私たちが作り出す日本酒にも触れていただければと思います。
まずは、糀が表現する古くて新しい世界を。                
                                        古町糀製造所 店主